※これはシャイニア編集長のわたくしが友人の女性Kさんに「旦那さんについて何か面白いエピソードとかあれば書いて送ってくれる?謝礼は払うからさ」という言葉がきっかけで投稿していただいた体験談です。
最近のかつらは精巧にできているので、風が吹いたり泳いだりしても滅多にズレることはないようです。
それなのに・・・
アイツ(夫)のかつらにまつわる私の悲喜劇エピソードを聞いてください!
※万が一夫にバレそうになったら、予告せずに削除依頼する可能性がありますことをご了承ください<(_ _)>
・・・まあ、教えないしバレないけどね・・・
1.夫の変化
このお話を理解していくために欠かせない、私の夫について最初に説明させてください。
夫は最近、60歳で定年を迎え、しばらく自宅でのダラダラ生活を満喫した後、それにも飽きたのか駅前のショッピングセンター通いを始めました。
開店と同時の午前10時に間に合うように、朝9時に家を出てバスに乗り、夕方15時ごろ帰宅するという規則正しい生活です。
私たちの住まいはとある地方のそれほど賑やかではない場所にあり、そのショッピングセンターは、駅ビルというよりも町の商店街を寄せ集めたような印象です。
1階は食料品、2階は本屋と婦人服、3階は食堂というこじんまりしたビルなので、普通に考えると夫のような定年後の男性が頻繁に訪れて面白い場所なんかじゃありません。
でも毎日することもなく暇を持て余している夫は、嬉々としてそのショッピングセンターに通うようになりました。
あ、夫の容姿容貌ですが、年齢より少し老けて見える普通のおじいちゃんです。
身長158センチくらい、ちょっと小太りで、スーツの生活が長かったせいか私服は私が用意したものを文句も言わずに着るような人です。
それともう一つ、このお話で最も需要なことをお伝えしなければなりません。
夫の髪は、頭頂部に10本くらいわずかに残っている程度、つまりハゲなのです。
言い方は悪いですが、チビ・デブ・ハゲ、すべての要素が整っています。
そんな夫に変化が訪れたのは、ショッピングセンター通いを始めてまもなくのことでした。
「急に色気づきやがって、わかりやすすぎるんだよっ!!」
というくらいの、それはそれは明らかな変わりっぷりでした。
おそらく、平日昼間のショッピングセンターには主婦がたくさんいるので、舞い上がってしまったのでしょうね。
そのショッピングセンターで買ったと思われる、10代が身につけるような安っぽいパーカーやチノパンやキャップをそろえ、今まで週に2~3回だった入浴も毎日するようになりました。
リステリンなんかも買ってきちゃって、恐ろしいくらい、わかりやすく色気づき始めたのです。
いちばん衝撃的だったのは、ある日突然、いきなり髪の毛がフッサフサになって帰ってきたことです。
帰宅した夫を見た瞬間、反射的に吹き出しましたよ。
「ギャグのつもり?」って。
だって夫の頭のてっぺんに、明らかに不自然な明るい茶髪のかつらが乗っかってたんですよ?!
私の動揺とは真逆に夫はさも満足気で、しかも何事もなかったようにご機嫌だったのですから、開いた口がふさがりませんでした。
私がたびたび(わざとらしく)「その頭どうしちゃったの」と聞くも、夫は巧みに話をそらし続け、結局かつらをなぜ買ったのか、どこで買ったのかなど、真相にはたどり着けませんでした。
そしてこの日から、夫のかつら生活が始まることとなります。
2.かつらがズレていた!!忘れもしないあの日
このお話の発端となる、ある日の出来事です。
いつも通り駅前のショッピングセンターに行くために9時に出かけた夫が、この日は普段よりずっと早く、13時頃に帰ってきました。
しかも尋常じゃないくらい慌てた様子で。
ついでにいうと、慌てたのは夫だけじゃありません。
汗だくで帰ってきた夫を出迎えた私は、夫の頭を見てひどく動揺しました。
だって、目の前の夫の頭が、ズレているを通り越して、ズル剥けだったんです!!←ホントにっ
さらに私を震撼させたのは、夫は全くそのことには気づいていない様子だったこと・・・はっ?
夫は玄関を開けるなりかなり焦りながら「財布をすられた!一緒に警察に来てくれ」と言ってきました。
パニックになっている夫、その真剣さは伝わるものの、目の前の夫はかつらがズレていて、まるでコントのようです。
私はかろうじて冷静さを保ちつつ、何があったのか尋ねました。
「ショッピングセンターで中年の男にぶつかられた。その時に転んで、ポケットを探ったら財布がなくなっていた」と、夫は必死に説明しましたが、私が聞きたかったのはそんなことじゃない。
そ・の・か・つ・ら!!
私は、気づかないふりをしていたこれまでの数カ月を帳消しにするかのように、夫にきっぱり、そして冷静に言ってやりました。
「かつら、外れてるわよ」
夫はハッとした様子で頭に手をやると、玄関に飾ってある花瓶を鏡代わりにして慣れた手つきでかつらをかぶり直しました。
それから夫はふと真顔になり、「なるほど、すべてつながった・・・」と独白を始めたのです。
3.この日の奇妙な出来事
夫が話した、この日の出来事はこんな感じでした。
朝、普段よりもバスがとても混んでいた。
車内が蒸れて蒸れてとんでもない暑さだったので、誰も見ていないと思い、頭皮とかつらの隙間にハンカチを挟み込んで汗を拭いた。
いつものコース、まずは開店と同時にインフォメーションの女の子にあいさつ、強制的に雑談。
なぜか目を合わせてくれず忙しそうにしてる。
お客さん、俺以外いないのに。
まぁ新人ちゃんだし、照れちゃってカワイイ娘だなと思いながら、次にアイスクリーム屋に行って、パートのおばちゃんを冷やかしに行く。
「よっ」っと手をあげてあいさつすると、おばちゃんはいつもの笑顔の代わりにプーっと噴出した。
「あら△×ちゃん、髪型変えたの!それって新作?」と。
俺は意味がわから無かったがとりあえず適当に「そうだよ」と返事して、おばちゃんにオススメされた<新作>のキャラメルミルクを受け取り、フードコートに陣取った。
アイスを食べ終え、汗もひいたので、お決まりのコースの本屋に行く。
この日は毎月立ち読みしている登山用シューズの専門雑誌の発売日だったけど場所が変わっていて、店員に「靴の雑誌はどこか」訪ねると、なぜか店員は私の足元ではなく頭ばかり見ながら案内してくれた。
立ち読みを終え、今度は雑貨店を徘徊する。
といっても毎日のぞいているので真新しいものはないが、なんとなく野球帽やハンチングの並んでいるコーナーを見ていた時のことだ。
店員がささっと寄ってきて、「お探しでしたら、こちらです」と言って、ウイッグコーナーに連れていかれた。
でもその店は、パーティー用の金髪とかアフロヘアの面白グッズしかないし、そもそも、こんな被りもの恥ずかしいし、買う奴の気がしれないので、あきれた私は黙って立ち去った。
そしてまたいつもの通り、ビルをゆっくり行ったり来たりしながら散歩していたが、やけに今日は周囲の視線を感じる。
この日、この地域の学校は休みなんだか試験が近いのかわからないが、制服姿の学生が早くから町に出てきていた。
そして生まれて初めての経験だが、私は女子高生から「一緒に写真撮ってください」と頼まれるのである。
しかも3回も。
そのうち1回は、私だけの写真を撮らせてくれとのことで、「人差し指をこめかみに当てる」という斬新なポーズまで指定されてしまった。
インスタグラムとやらにあげてもいいかと聞かれたので、よくわからなかったが嫌われたくなくて「いいよ」と例のポーズを決めて快諾した。
女子高生たちがたいそう喜んでくれたので、私はかつてないほどの充実感を味わっていた。
その直後だ。
すっかりご機嫌になって気もそぞろな私に、いきなり見知らぬチンピラ風の男がドスンと体当たりしてきたので、私は思わず転倒してしまった。
男が「どこ見て歩いてるんだよ!この・・・」とすごんできたので謝ろうとしたとき、あろうことか男がいきなり大爆笑を始めたのだ。
チンピラ風情の容貌に突然の意味不明な大爆笑、これはきっと「麻薬常習者に違いない!」と確信した私は、どんどん大きくなる男の笑い声を背に、あわててその場を立ち去った。
ビルを出て一息ついたところで、尻ポケットに手をやり青ざめた。
財布がない!
きっとあの男にスラれたに決まってる。
でも、今戻っては危険だ。
そこで私は、数キロの道のりを歩いて一旦家に帰ることにしたのである。
夫のこの日の出来事は、こんな流れでした。
そしてこの後、夫と私はショッピングセンターのある最寄りの警察署に行ったわけですが、財布は無事見つかりました。
スリがつかまったのではなく、ショッピングセンターの落とし物として届けられたそうです。
警察官は財布にあった夫の免許証と、目の前にいる夫を2度見、いや3度も4度も見返しながら、何か言いたそうなそぶりを見せつつ、苦笑いで財布を手渡してくれました。
その後.私の悩み・夫の次なる野望とは・・・
夫のズラズレズル事件以降、ある夫の言動が私を悩ませ始めまることとなります。
私を悩ます夫の野望とは、「植毛する」と言ってきかないことなのです。
あの日、女子高生から声をかけられて自信を持ったらしいのですが、夫はズレを面白がられていたことにはまったく気づいていません。
こんな私の心配をよそに、アノヤローときたら「この前のすったもんだはすべてかつらのせいである」「ズレることさえなければこれからもモテ続けるに違いない」という変な自信がマンマンで、すでに数社でカウンセリングの予約をとっているようなのです。
私たちは、この先年金と、1千万円ほどの預金だけが頼りです。
植毛ともなれば、いくらかかるかわかりません。
あと、アイツじゃもう自毛植毛もできません。
※ちょっと関連記事割り込みすみません(編集部)
いい加減現実を直視してほしいし、もしこの先も血迷った行動を続けるようなら脳の検査をさせる、結果によっては離婚も辞さない、というのが私の結論です。
こんな感じで失礼します!
この話を聞いて思ったのは、定年後の夫の爆走の怖さです。
高校デビューや社会人デビューを経験してこなかった人にありがちな、定年デビューは厄介です。
忖度を好意と勘違いする手前勝手な都合の良さ、それによって周りを振り回して結局はこれまでの人生、この先の人生を、ダメにしてしまうのです。
こうした中高年の勘違いトラブルは、一歩間違うと大変なコトにもなりかねません。
私は(笑いをこらえながら)真剣に、相談者である友人のKさんに言いました。
「自由にさせなさい。放っておきなさい。でも決して家のお金を渡してはいけません」と。
どんなに鈍感な定年デビューの男だって、長かれ短かれ自分が思うようにモテないということにはいつか気づきます。
そこでモテを磨く資金のためにバイトするなり何かしらの向上心を見せれば、それはそれでいいのですが、家のお金を使ってまですることではありません。
そこらへんの境界線はビシッと引きつつ、妻という立場でおおらかに見守ってあげましょう。
夫が自分のイタさに気づくまで・・・
まとめ
今回は定年後の夫の暴走に関する、Kさんの悩みを紹介しました。
急にかつらやアイプチなどに手を出す中高年男性の多くは、これまで全くオシャレに無頓着だったという人が多い傾向がみられます。
自分をこう見せたいという思いが強いあまり、他人からどう見られるかについてあまり注意を払えないのです。
もしあなたの身近にこのような人がいたら、暴走する前にそっと(時にはズバッと)アドバイスしてあげてくださいね。